映画『罪の声』の感想|昭和の未解決事件の真相に迫るゾクゾク感! そして最後は…(ネタバレ注意)

ごりら

こんにちは! ごりら@goriluckey)です!!

映画を観終わったあとにこんなにも疲れた・・・のははじめてかも知れません。

2020年10月30日(金)に公開がはじまった『罪の声』を観て来ました。

『罪の声』は昭和の未解決事件のひとつ「グリコ森永事件」をモチーフにした映画。

1970年代後半生まれのわたしはグリコ森永事件の当時、小学生でした。『罪の声』のふたりの主人公、新聞記者の阿久津英士(小栗旬)とテーラーの曽根俊也(星野源)とは(ほんの少しだけ上の)同世代なんですよね。

疲れた・・・」というのはもちろん映画が退屈だったわけではなく、ふたりの主人公へのわたしの感情移入がすさまじく、映画の最初から最後までずっと心が動き続けたからなんです。

『罪の声』は話の展開にもリアリティがあり、わたしと同世代以上ならグリコ森永事件の真相に迫るノンフィクションのような感覚で楽しめると思います。

上映時間は142分と長めですが、時間の経過を感じさせない映画です。

ごりら

わたしと同世代の人にはぜひ観てほしいです! 当時京都に住んでいた人には、特に!

できる限り具体的なネタバレはしないように書いていますが、ネタバレの可能性がある点はご了承ください。

昭和の未解決事件「グリコ森永事件」の真相を知りたい! そんな思いで映画『罪の声』を観賞することに

グリコ森永事件の当時、小学生だったわたしには事件のはっきりとした記憶は残っていません。ですが、母親から「おかしの中にはどくが入っているかもしれない」と言われていたことはなんとなく覚えているんですよね。

グリコ森永事件は2000年2月13日に公訴時効が成立し未解決事件となりました。

未解決事件だからこそ、グリコ森永事件はテレビ番組で取り上げられることも多く、事件当時の記憶はほとんどないわたしの中にも事件の印象的な情報が次から次へとインプットされていきました。長い年月をかけて。

  • キツネ目の男
  • かいじん21面相
  • マスコミに送り付けられた挑戦状「けいさつの あほども え」
  • 脅迫電話に使われた子どもの声

「劇場型犯罪」と呼ばれるだけあって、どの情報もこれが現実世界で本当に起きた事件なのかと思うようなことばかり。まるでテレビドラマの設定みたいですよね。

なので、わたしは数ある未解決事件の中でも「グリコ森永事件」と「三億円事件」にはエンタテインメント性を感じてしまうんです。

どちらの事件も犯人グループが直接的には人命を奪っていないと言われているのも理由かも知れません。

実際に起きた事件であるにもかかわらず、わたしはドキドキワクワクするこの2つの事件を好奇の対象として見ていたんですよね。

ごりら

『罪の声』を観るまでは…

わたしが映画『罪の声』の上映を知ったのはテレビのCMでした。

映画『罪の声』予告

「きょうとへ むかって いちごうせんを…」テレビからあの印象的な子どもの声が聞こえて来たんですよね。

そのテープの声に重ねて、曽根俊也を演じる星野源が続けます。

「ギン萬事件で犯人が使こうた子どもの声のテープ、わたしなんです。

ごりら

………!!

『罪の声』のCMを目にするたびに興味がわいたわたしは日本中が「『鬼滅の刃』 無限列車編」に夢中になっている中、公開2日目の夜に映画館へ足を運ぶことにしました。

映画館へ!
映画館へ!

映画『罪の声』の感想

わたしは『罪の声』の上映中、最初から最後までずっとある種の興奮状態にありました。

ですが、物語の序盤から中盤と中盤から終盤とではわたしの中でグリコ森永事件(作品の中では「ギン萬事件」)の真相に対する感じ方が変わったんですよね。

序盤から中盤はグリコ森永事件の真相に迫るゾクゾク感、中盤から終盤にかけてはこの物語のようなことは実際には起こっていてほしくないと願う気持ち

ごりら

そうなんです。前半と後半とでは正反対なんですよ…

『罪の声』序盤〜中盤|「ギン萬事件」の真相に迫るゾクゾク感!

物語は主人公のひとり、京都で老舗のテーラーを経営する曽根俊也が自宅の押し入れで自分が子どものころに録音されたテープを偶然見つけるシーンからはじまります。

CMでも流れていた、ギン萬事件で使われた子どもの声のテープがいきなり登場し、一気に『罪の声』の世界へ引き込まれてしまいますよ。

曽根は幼少時の自分が知らないうちにギン萬事件にかかわっていたかも知れないという不安に駆られ、事件のことを調べはじめます。

一方、もうひとりの主人公で大日新聞の記者、阿久津英士は未解決事件の特集でギン萬事件を担当することになり、ギン萬事件のことを知る人物をたどっていきます。

曽根と、阿久津。それぞれがギン萬事件の真相をさぐり、断片的な情報が少しずつつながっていくんですが、話の展開に無理がなく、説得力があるんですよね。

描写も丁寧なので、グリコ森永事件のことを知らなくても、事件の真相に迫っていく瞬間は背筋がゾクゾクする感覚を味わうことができるのではないでしょうか。

ごりら

京都や大阪の見慣れた風景が多く使われているのも、わたしにとっては物語の世界に引き込まれた要因かも知れません。

未解決事件の謎が紐解かれていく過程は緊張と興奮の連続なんですが、そんな中、劇場のお客さんが思わずクスッとするシーンもありましたよ。

それは、ギン萬事件の犯人グループを知る小料理屋「し乃」の板長・佐伯肇(橋本じゅん)が曽根、阿久津それぞれに問い詰められるシーンです。

この佐伯がうっかり口を滑らす、滑らす…!! もっとも、そのおかげで阿久津は曽根にたどり着くことができたんですが…

ごりら

佐伯のような人物が実在してたら、グリコ森永事件は未解決事件になってないやろ…w

『罪の声』中盤〜終盤|予想外の話の展開にむしろ真相ではないことを願う気持ちに…

新聞記者の阿久津がテープの声の主のひとりである曽根にたどり着き、ギン萬事件の残された謎を明らかにするために、やがてふたりは行動を共にすることになります。

ギン萬事件で使われた子どもの声が録音されたテープは3つあり、曽根は自分以外のふたりの子どもが今どうしているのかを確かめようとしたんです。それがギン萬事件の残された謎。

ここから終盤にかけては、わたしがグリコ森永事件に抱いていたエンタテインメント性のある事件のイメージとは違う、予想外の展開を見せました。

ですが、もしもギン萬事件の犯人グループの構成や事件の動機が真実なのであれば、終盤にかけての物語のようなことが実際の事件であるグリコ森永事件でも起こっていたのかもしれないと思えるようなものでした。

序盤から中盤に感じていた事件の真相に迫るゾクゾク感ではなく、映画の終盤、わたしの心にあったのは虚無感にも近い感情だったように思います。

そう言えば、同じく昭和の未解決事件「三億円事件」をテーマにした『三億円事件ー20世紀最後の謎ー』(2000年12月30日放送・ビートたけし主演)というドラマを観た時にも同じような気持ちになったのを思い出しました。

ごりら

犯罪は犯罪。エンタテインメントではないということですね…

映画『罪の声』が問いかける現代社会が抱える闇

『罪の声』の主人公のひとりである阿久津が新聞記者ということもあり、マスコミの在り方もこの映画のテーマのひとつになっているように感じました。(実際にグリコ森永事件ではマスコミは犯人グループに利用されています。)

さらにわたしは昨今のインターネット上の歪んだ正義感に対しても『罪の声』がなにか問いかけているような気がするんですよね。

ごりら

「グリコ森永事件の真相」とは異なる視点で観ても興味深い映画です。

マスコミの在り方や報道姿勢に対する問いかけ

実際の事件の報道でも「こんなこと被害者遺族に聞く必要あるか…?? 」と憤りを感じることってありますよね。

『罪の声」では、マスコミの在り方や報道姿勢ついて、阿久津が社会部から文化部へ異動になった経緯を語るシーンなどでたびたび問いかけられますよ。

第三者の身勝手な興味関心が事件の関係者を苦しめる

実はわたしははじめて『罪の声』のテレビCMを観た時、こんな考えが浮かんだんですよ。

ごりら

もしもグリコ森永事件で使われた子どもの声が自分の声やったら超ラッキーやん!!

幼少時の自分はあくまでも利用されただけという「安全地帯」にいながら、あの有名な未解決事件の謎の一部に自分が関わっているという事実が手に入るなら最高! …そんなふうに考えてしまったんですね。

ですが、作品中の曽根はまったく正反対でした。

自分の意思ではないとは言え、自分が犯罪にかかわっているという事実。そして身内が犯罪グループにいたかも知れないという不安に曽根は押しつぶされそうになるんですね。

曽根ははじめて阿久津と対峙した時に自身が置かれた不安な状況を怒りに変えて阿久津にぶつけます。

結局はわたしのような浅はかな考えが事件関係者に対するマスコミの執拗な取材攻勢につながっていくのかも知れませんね。

インターネット上の歪んだ正義感

『罪の声』の終盤、犯人グループのひとりと予想外のある人物は警察や社会に対する復讐が動機であると語ります。

その動機が事実だとしても、ギン萬事件を起こしたことによってなにが変わったのかと問い詰められるんですね。

このシーンを観た時にわたしは昨今のインターネット上の歪んだ正義感に通じるなと感じました。自分の身勝手な正義感でだれかを攻撃してもなにも変わらないのと同じですね。

まとめ|映画『罪の声』の感想

この記事では『罪の声』をご紹介しました。

わたしにとって『罪の声』は映画館へ足を運んででも鑑賞する価値のある作品でした。

鑑賞前に抱いていた「グリコ森永事件の真相に迫る映画」という期待を上回り、いろいろな視点で考えさせられる映画でしたよ。

ごりら

時間を置いてからもう一度観たいぐらいです!

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実際に起きた未解決事件をモチーフにした作品は見終わったあとに「正解」を求めてしまい、どうしても複雑な気持ちになりますね。

逆に実在する人物が作品の中に登場するパターンは純粋に楽しめます。わたしの中でこのパターンの最高傑作は『古畑任三郎 VS SMAP』なんですよ!

もしもSMAPが事件を起こすとしたらきっとこんな理由で、たしかにメンバーのひとりひとりがこんな行動を取るんだろうなというリアリティさがあるんですよね。