全くの未経験から、3ヶ月半。
空手に縁のない我が家が空手道場に通い始めるようになったのは、私も息子も“肥満体質からの脱却”がキッカケでした。小学生の息子はもちろん、私自身も空手の経験は全くありませんでした。私たちが通っている道場は自宅から近いこともあり、平日に1、2回と毎週末には道場で稽古に励んでいます。こちらの道場は道場開きから1年ほどのですので、会員さんもそれほど多くありません。その分、ものすごく熱心にご指導いただいています。
夏休みが終わり、9月に入ったある日。道場の壁にこれからの試合のスケジュールと「ぜひ挑戦してみてください!」という先生の熱いメッセージが添えられた告知が貼り出されていました。道場に通い始めた頃、息子は先生から「来年の試合に出られるようにがんばって練習しよう!」と言っていただいていましたので、私もなんとなくそんなスケジュール感をイメージしていました。それが一転。1ヶ月後の試合に出てみようということになりました。試合ではヘッドガードを着用し、小学生の試合では顔面への攻撃は禁止されているとは言え、実力が伴っていないと危険なことには違いありません。私たち会員が安全に空手に取り組めることを第一に考えてくださっている先生ですので、息子は試合に出られるレベルには達していると判断していただいたのでしょう。
「試合に出る」と決まってからの1ヶ月間は、同じく出場することになったひとつ上の学年の子と一緒に厳しい稽古に取り組んできました。それまでは平日には1、2回行くかどうかでしたが、この数週間はほぼ毎日のように道場に通いました。
会場に集まる、熱気。
しかしながら、息子はここ数日は体調を崩してしまい、昨夜には微熱があるほどでした。もしかしたら棄権するしかないかも…という最悪なコンディションでしたが、今朝は熱も下がっており、なんとか出場できる状態まで体調は回復していました。
試合会場は少し遠い場所にあるため、朝8時前には自宅を出発。高速道路で会場へ向かいます。息子と同じタイミングで空手を始めた娘は今日はお兄ちゃんの応援です。大きな渋滞に巻き込まれることもなく、9時過ぎには会場のある体育館へ到着しました。総合体育館なので息子が参加する空手の大会の他、剣道や卓球などでも利用されているようで、多くの人たちが集まっています。
試合に出場するために買った胴着に着替えて受付を済ませると、スタッフとして会場の運営をされている先生が来てくださり、試合前のウォーミングアップとしてミットを受けてもらいました。
試合が行われる会場はイメージしていたよりも狭く、試合に出場する選手と保護者で既に熱気ムンムン。今回の試合は私たちが所属している団体の大会で、本部道場や支部道場のメンバーが各地から集まっています。本部道場や大きい支部道場は複数名が参加しているので、普段稽古をしている雰囲気に近いんだろうなぁと思いました。私たちにとっては完全にアウェーです。笑
総勢60名以上の選手が集まり、開会式が始まりました。館長のご挨拶やルール説明が行われました。今回の大会は午前の部と午後の部があり、一人の選手につき、2試合ずつを行うことになります。
そして、デビュー戦。
実は、試合会場に到着した時に、先生から衝撃の事実が告げられていました。
「今日の最初の試合の相手は、いろいろな大会で入賞しています。新空手でも準優勝の実績がある子です。』
正直、「えぇぇぇえ!?」という感じでした。それを聞いた息子もさすがにちょっと萎縮しているように見えました。開会式が終わった後、試合までに時間があったので、ロビーに行き、まずは気持ちを落ち着けることから始めました。実績のある子が相手なので、技術やパワー、スピードでは敵いません。完全に“精神論”の世界ですが、「気合いでは絶対に負けるな。相手はガンガン攻めて来るやろうけど、引くな。前に出て戦おう!それで負けたら仕方ないわ。」と話し、相手をイメージしながら、軽くスパーリングを行ないました。
会場では試合がどんどんと進み、息子のデビュー戦が刻々と近付いてきます。息子が緊張しているかと思って声をかけましたが、案外、大丈夫そうです。むしろ緊張しているのは私たち親の方なのかも知れません。自分の試合の数試合前になると防具を着用し競技場のまわりに並んで座ります。息子の試合の時には先生も競技場に来て、セコンドのような立ち位置で息子の側に付いてくださいます。
そして、ついに息子の出番です。息子の名前が読み上げられ、大きな声で返事をします。
「押忍!」
一歩前に進み、競技場に入る前に黙礼。「正面に礼!主審に礼!互いに礼!」審判の号令でそれぞれにおじぎをし、一気に試合開始!
試合が開始されると同時に、私も先生も大声で「前に出ろ!引くな!」を連呼。大絶叫です。その声が息子にも届いているのか、完全に格上の選手を相手に全く引くことなく、見ようによっては押しているようにさえ思えます。適度な間合いがある方が相手のハイキックが飛んでくると思っていたので、とにかく間合いを詰める作戦でした。相手の激しいパンチを受けながらも、息子も負けじと応戦しています。試合時間の1分があっという間に終わりました。もしかしたらボッコボコにされることも想像していましたが、大健闘です。私も先生も興奮が抑えられません。どちらの選手もポイントを取れていなかったので、判定になります。主審と4人の副審が旗を上げ、どちらが優勢だったかを赤色と白色の旗で示します。赤色が挙がれば息子の勝ち。主審の号令で一斉に旗が挙げられます!
白が1!
引き分けが3!
息子の“赤”は挙がりませんでしたが、引き分けです。引き分けの場合は30秒の延長戦となります。すかさず、先生が「延長戦や!息を整えろ!」と指示を出されました。
そして、延長戦がスタート!先ほど以上に、大声で応援します。「前に出ろ!押せ!押せ!負けてないぞ!行け!」と先生と二人で大絶叫!それに応えるように息子が前に出ます。本当に相手の選手が引いているように見えました。「押せ!勝ってるぞ!行け!止まるな!」今振り返ればめちゃくちゃなんですが、必死で応援しました。延長の30秒もあっと言う間に終了。再びポイントが無かったので、判定です。
結果、延長戦でも決着がつきませんでした。息子の初試合の結果は、「引き分け」となりました。しかしながら、普通の引き分けではありません。相手は多数の実績がある選手。空手を始めて3ヶ月半の息子にとっては、贔屓目無く、勝ちに等しいと思いました。隣では先生も悔しがっているようす。会場に到着した時には相手が強いから負けても仕方がないと言ってくださっていた先生が悔しがっているのが、息子の大健闘を物語っています。
そして、午後からの第2試合。終始押していたものの、デビュー戦と同じく延長戦へ突入。延長戦でも押していましたが、試合終了間際に相手にミドルキックを決められてしまい、ポイントを取られ、無念の敗戦。終始押しているように見えていただけに残念な結果に終わりました。ヘッドガードを外すと流れるような汗と一緒に両目から溢れる涙。勝つことができなかったのが悔しかったのでしょう。
空手は、“団体競技”。
空手を始めてからわずか3ヶ月半で臨んだ初試合。残念ながら勝つことはできませんでした。
しかし、息子がデビュー戦を終えた今、改めて空手を始めて良かったと思っています。今日、わたしが感じたのは「空手は、団体競技」であるということ。競技場の中で戦うのは確かに一人です。ですが、先生を始め、同じ道場に通う仲間や関係者が一丸となって応援してくれます。いつも少年部の練習をサポートしてくださっている会員さんもご夫婦で応援に駆け付けてくださいました。本当に嬉しかったし、息子にとってもいつも一緒に稽古をしている人が一人でも多いことが心強かったと思います。会場に来ておられない他の会員さんからもSNSでメッセージをいただいたりしました。まさに同じ道場に通う仲間が“ONE TEAM”となっていました。
また、今回悔しい思いをしたことは、息子にとって良い経験になったと思います。この悔しさを糧に、これからも空手の稽古に励んでほしいですね。親子で一緒にレベルアップしていければと思います。とにかく今日は息子の労をねぎらってあげたい。格上相手にひるまなかった息子に敬意を表して。
こんにちは! ごりら(@goriluckey)です!!