今回は「娘のピンチを救った『再会のキセキ』」についてお話します。
例えまわりの人たちに変な目で見られようとも、わたしは父親としての誇りに満ちあふれていたのです。その時は。
みんなのクワガタ
この話は先週末にさかのぼります。
小学生の娘が自慢げに話しかけて来ました。
「今日学校でクワガタ捕まえた! 」
娘の発言にわたしは驚きを隠せませんでした。たしかにわたしの家の近くにはカブトムシがいる稲荷山もあるので、クワガタがまったくいない環境というわけではありません。ですが、娘が通っているのは市街地にある小学校です。
娘が言うには小学校の廊下にいたクワガタを友だちといっしょに見つけたそうです。その友だちとジャンケンをして勝ったので、今日は自分が家に持って帰って来たのだと。
う〜ん。まあめずらしいこともあるもんやなと思いながら、娘が両手で抱えているプラスチック製の飼育ケースに目をやりました。
パッと見た感じではそこにクワガタがいるようには見えませんでした。
クワガタの失踪
「クワガタのゼリー買いに行こっ! 」
土曜日の夕方になって、娘がふたたびクワガタの話をはじめたのです。
「えっ…ホンマにいんの? クワガタ? 」
クワガタの存在を確認していないわたしは娘が言っていたことを信じていませんでした。いや、信じていないと言うよりかは、娘は小学校の友だちと「クワガタを育てるごっこ」をしているんだ、そんなふうに思い込んでいたのかも知れません。
だって、クワガタがいるはずの飼育ケースにはフタもしていなかったから。
わたしは娘のごっこ遊びに付き合うつもりで娘といっしょに100円ショップへ行き、昆虫ゼリーやのぼり木を買いました。
家に帰ったわたしたちは昆虫ゼリーを開封する前に飼育ケースの土を掘り起こしてクワガタを探しました。
そこに息子も加わり、3人で注意深く飼育ケースの中を観察しましたが、“やっぱり”クワガタはいませんでした。
「あれ〜あれ〜」と不思議そうに飼育ケースを探す娘。
「ホンマにいたん? 」わたしと息子が声をそろえます。
こんなやり取りをしているのを見ていた妻が「クワガタどっか行ったん? 」と一言。
「えっ!? 見たん!? 」
わたしと息子がふたたび声をそろえます。
「昨日持って帰って来てたで。」
どうやら娘が家にクワガタを持って帰って来たのは事実らしい。
トラップ
家族みんなでクワガタの行方を探しましたが、見当たりません。
「なんで飼育ケースのフタ閉めてないねん…」と思いながらフタの無い空っぽの飼育ケース見たわたしはひらめきました!
そうか! 昆虫ゼリーを飼育ケースの中に仕掛けておけばクワガタが戻って来るんとちゃう!?
部屋の真ん中にフタの無い飼育ケースを置き、その中に昆虫ゼリーを仕掛けて、わたしたちは寝ました。
そして、月曜日の朝。
残念ながら、飼育ケースの中にクワガタの姿はありませんでした。
父親の不安
わたしはクワガタがどこかへ行ったことよりも、あることが気になっていました。
それは失踪したクワガタが娘ひとりのものではなく、友だちといっしょに見つけたクワガタであるということ。
娘が家に持って帰って来たのはたまたまジャンケンで勝ったからです。
「次は自分がクワガタを家に連れて帰る番! 」そんなふうに楽しみにしている娘の友だちがいる。
その子に申し訳ないな…という気持ちもさることながら、もしかしたらこのことがキッカケで娘がクラスで孤立したり、イジメられたりしないだろうか。そんなことで頭がいっぱいになりはじめたのです。
そして、奇跡が起きた!
わたしは娘のことが心配で仕事が手につかなくなりました。(いや、仕事が手につかないのはいつものことか…)
早く家に帰ってクワガタを探さないと。それとも稲荷山でクワガタを捕まえた方が早いかな。
そんなことを考えていた時でした。
なんと!
わたしの靴の中からクワガタが出てきました…!!!
足の指先に違和感があったので、靴を脱ぐと、靴の中でゴソゴソ動きまわっている黒い影を見つけたのです。
それがクワガタであることはすぐにわかりました。
わたしの靴は必要以上につま先が長いデザインの「luminio(ルミニーオ)」。
つま先のあたりに5センチほどの空間が存在するんです。
つまり、わたしが通勤している間も、同僚とお昼ご飯を食べている時も、このクワガタはず〜っと靴の中にいたということになります。
お菓子の空き箱
ふだんからマジメに働いていないとは言え、さすがにオフィスでクワガタと戯れていたら怒られそうな気がします。
ちょうどわたしの手元にはオフィスグリコで買った食べかけの「クリームコロン」がありました。
クリームを包んでいる外側部分を砕いて空き箱に入れます。クワガタが転倒しても自力で立ち上がれるようにするためです。わたしはクワガタをクリームコロンの空き箱へ捕獲することに成功しました。
やった!! クワガタを奪還した!!
わたしは稲荷山でクワガタを捕まえた時の数百倍コーフンしました。オフィスでクワガタを捕まえるなんてなかなか体験できることじゃないですからね!
早くこのクワガタを家に連れて帰り、娘に見せてあげたい。そんな気持ちだけを原動力にわたしは大嫌いな仕事を片付けます。
すごい! ワイ、めっちゃ仕事できる人!!
しかし、そんなわたしの気持ちに水を指すかのようにクワガタはお菓子の空き箱の中を歩きまわっています。
ガサゴソ、ガサゴソと…!!
あまりにも気になるので、そ〜っとお菓子の空き箱の中をのぞいてみました。
うわ〜箱の中をよじ登ってる〜!
ずっとクワガタを観察していたいのをガマンしてわたしは再び仕事を続けます。
ガサゴソ、ガサゴソ…
ですが、クワガタがお菓子の空き箱の中を歩きまわる音が気になって集中できません。
デスクワークをしながら何度もお菓子の空き箱をのぞき込むおっさん。
うわっ、目が合った!!
結局、思った以上に仕事を片付けるのに時間がかかってしまいました…。
わたしはクワガタが逃げないように小さなお菓子の空き箱を手で押さえながらオフィスを後にしました。
わたしと同じように家路を急ぐサラリーマン。ギュウギュウ詰めとは言わないまでもそれなりに人が多い通勤電車。
そんなよくある日常の風景の中、まるで宝石箱を扱うようにお菓子の空き箱を大切に抱えているのはわたしだけです。
完全に不審者や…
クワガタは土の中にいる
高鳴る気持ちを抑えようにも抑えられない。わたしは最寄り駅から自宅までの道を小走りで帰りました。
そして、ついに無事に自宅へ到着。
クワガタ連れて帰って来たで!!
誇らしげにリビングへ飛び込んだのですが、あいにく娘はお風呂に入っていました。なんたる、肩透かし。
仕方なくクワガタをお菓子の空き箱から飼育ケースへ移そうとしたのですが、飼育ケースは娘が学校へ持って行ったのですでに家にはありませんでした。
わたしは急いで近所の100円ショップに走り飼育ケースと昆虫マット(腐葉土)を買って来ました。
ちょうどお風呂から上がった娘といっしょに飼育ケースをセットし、クワガタを飼育ケースへ。
「おかえり〜クワガノン!! 」
えっ? クワガノン…?
クワガノンとの再会を果たした娘は飼育ケースの中で昆虫ゼリーをむさぼるクワガノンを嬉しそうに見つめています。
「良かった。」
わたしは心の底からそう思いました。おおげさなのかも知れませんが、もしかしたら娘が小学校で孤立するキッカケになったかも知れない事件を解決できたわけですから。
あれ…
そう言えば、今日、娘はいっしょにクワガタを見つけた友だちにどのように説明したのでしょうか?
なあなあ、空っぽの飼育ケース持って行ったんやろ? みんなにはなんて説明したん?
「ろうかで友だちが『クワガタは〜!? 』って言うから、『やめてくれぇ…空っぽやのに…』って思っててん。」
「お、おおん。それで? 」
「土の中にもぐってるって言うた。」
………。
…どうやら、わたしは心配する方向を間違えているのかも知れません。
この記事のまとめ
今回は「娘のピンチを救った『再会のキセキ』」についてお話しました。
奇跡的にクワガタを発見できたのは良かったのですが、育児上の新たな問題が浮き彫りになったことに少々ショックを受けております。
それにしても激クサなわたしの靴の中で半日も生き延びたクワガタの生命力にも驚きです。
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こんにちは! ごりら(@goriluckey)です!!